先日、Z400LTDのエンジンをオーバーホールしました。同時に北米仕様440cc用のオーバーサイズピストン&シリンダーを使い、450cc+αに排気量を上げました。
現在慣らし運転と称しまして、エンジン回転数などに制限を掛けながらマイレージを伸ばしています。
今回の記事ではその慣らし運転について、原理や必要性などを書いて見たいと思います。
慣らし運転とは
すごく大雑把に言うと、
機械の作動時に初期摩耗、初期馴染みを安定的に発生させる。その後、性能が安定して発揮されるような状態にする
という作業です。よく「あたり付け」とか言う人がいますが、それは上記の考え方をもっと丸めて一言で表現したものになります。
慣らし運転の概念
慣らしとは、摺動・回転・振動など、動く物が限りなく抵抗がなく、スムーズに動く状態にする行為です。
新品状態の機械は、バリや引っ掛かりが必ずあります。精密に組み立てられていたとしても、微妙な歪みや変形が存在したり、かみ合わせが微妙に合わなかったりします。
そこで比較的低負荷状態の運転を行って、機械の運動でこそぎ落とします。また、発生した熱・応力・負荷で部品同士がうまく噛み合って収まるようにして、スムーズでガタがない状態にします。
これが慣らし運転です。
良い慣らし運転を行って、スムーズにガタが無い状態になると、部品が、
- 本来動くべき所に
- 正確に
- 早く
- 抵抗なく
という状態で動けるようになります。
つまり、一番性能が出るコンディションになるのです。
機械は、使い始めの初期が最も大きく摩耗します。その後ほとんど摩耗せずに一定の状態を保つようになり、ある時期を境に急激に摩耗が増えて破壊される、という傾向を示すことが多いです。
慣らし運転は、部品の初期的摩耗をある程度コントロールしながら発生させる行為、とも捉えることができるでしょう。
良い慣らし運転は、部品に対してやさしく、システム全体の寿命を伸ばし、安定してよい性能を長く出せることにも繋がります。
シリンダーとピストンの慣らし
今回のエンジンオーバーホール後のような、シリンダーとピストンの慣らしの意味。
これはピストンとシリンダーにゆっくり応力かけをゆっくり変形させ、馴染ませることです。ゆっくりというのがポイントです。
うまく慣らしの出来たピストンとシリンダーには、当たりは強く出ません。
なぜなら、最初線接触だったピストンとシリンダーが、変形により面接触に近い形となり、側面方向への荷重が分散され、面圧が低下するからです。
もし慣らし初期で一気に負荷をかけてしまうと、必要以上のピストンの変形が発生してしまいます。
すると走行距離が延びた際、異常変形したピストンとシリンダーの間で線的な接触が発生。局部的な荷重が高くなりシリンダーへのダメージも大きくなります。
性能面でも油膜が切れやすくなったりなど、良い状態は望めません。
慣らしをしっかりすることで、定期交換距離まで安定した性能を維持できるのです。
今回のボアアップしたZ400の慣らし運転シーケンス
さていろいろ書きましたが、今回は以下の流れで、ならし運転を進めています。
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自宅に帰るまでの、東京⇒宇都宮間150㎞位を走行。回転数は4000回転が上限(Z400LTDの場合)。
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帰着後、即オイル交換(自分がO/Hをお願いしたTRカンパニーさんによると、作業後の初回は50kmくらいで交換することが多いとか)
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オイル交換後、上限4000回転のまま500㎞走行する ←いまここ
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500㎞走ったらフィルター込でのオイル交換
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上限を5000~5500回転くらいまで上げて、さらに1000㎞走行
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更に1000走ったら、オイル+フィルター交換。
ここまでやって慣らし終了です。
2018年6月6日現在で、235km程度走り終えました。あとおよそ半分です。カミさんにも協力してもらいながら、少しづつ距離を伸ばしていきたいと思っています。
もし腰下までオーバーホールして、ミッションなども交換されていたら、ギア毎にもならしが必要になるかと思います。
できるだけ各ギアで回転数を1000~4000回転の間で、まんべんなく使って走るとかですね。今回は腰上のみの分解ですので、回転数上限のみを縛りとして走っています。
ちなみに先日、パイオニアランジャパン2018にて、パレードランの先導をしました。
比較的排気量が小さい車両のグループだったので、MAXでも50km/h程度の巡航でした。慣らし運転的にはコレ本当にありがたかったんです。自宅からの行来も含め、その日は80㎞位走ることができました。
普段走ることができない色んなバイクと一緒に走れたことと、適切な負荷をかけながら、ならし運転のマイレージ伸ばせて嬉しかったです。
注意点
これらの工程の間、暖気はしっかり行い、急加速・急減速・急旋回といった「急」が付く動作は厳禁です。
必要以上に神経質になる必要はないかもしれませんが、徐々に負荷を上げていく、ゆっくりエンジンに応力を与える、という心構えは忘れてはいけないと思います。心構えているだけで、だいぶ違うと思うのです。
機械は正直です。上記に記載したように、最初丁寧に扱ってあたりを付けてあげることは、後々の耐久性に大きく寄与すると信じています。メカニズム的にもあってるしね。
そして職人さん・技術者の方に、丁寧に作業して作って頂いたものは、使い手も丁寧に扱ってあげることで、必ず期待に答えてくれる。魂というかね。なんかそういうものって、やっぱりあるんじゃなかろうか。僕はそう信じています。
気になったこと
ここからは走っていて何点か気になったことが有りましたので、まとめていきます。
始動時について
最初かかりづらさがあったのですが、十分にバッテリーが充電されたら、特に問題なくエンジンが始動してくれるようになりました。
アイドル時の1000~1200回転付近の排気音は、ボアアップ前と大差はないです。ただブリッピングをしてあげると、爆発の粒がよりはっきりとし、少し音が大きくなったような気がします。
プラセボ効果じゃないの??なんて言われるかもしれませんが、自分にはそう聞こえますw
プラグについて
自分のLTDはブリスクプラグを使用しています。
このプラグに変えてから感じていたのが、「セルモーターのスイッチを離した時にエンジンが掛かりやすい」という傾向があるということ。
ブリスクプラグは、火花を混合気に広く接触させる事を目的とし、電極間のギャップが大きい設計になっています。
火花を発生させるためにはより高い電圧が必要となります(なのでASウオタニのコイルキットなどの昇圧デバイスとの相性が良い)。
ただ冷間始動時はクランキングのためセルモーターへ大電流を流すため、昇圧回路を経由したとしても、プラグヘ至る電圧が低下して火花が飛びにくい可能性がある・・・・・という話を以前ある人から伺いました。
なので、自分が感じていた「セルを止めた瞬間にエンジンが掛かりやすい」という話とは辻褄が合います。
次回の500km以降の慣らし運転の際には、プラグを今までのBR7ESプラグに交換してみようと思います。1本400円w
コレで始動性が改善すればラッキー。駄目だったら他の原因を探ります。
パワー感について
今までの400ccに対して、薄皮一枚分パワーが上乗せされている感じ。
すごく伝わりにくいと思うけど、ほんとこんな感じです。以前の仕様の記憶を手繰り寄せながら、乗り比べると分かるかなぁ・・・というレベルです。
特に3速での加速感が比較的わかりやすいと思います。大幅なパワーアップは無いですが、幾らかダッシュ力に余裕が出そうな感じがしています。
欲を言えばもう少し回したいですね~。LTDのトルクピークは5500回展なんです。現在4000回転が上限なので、すごく寸止め食らっている感じがしてもどかしいのです。5000~6000回転まで回したらかなり愉快な乗り物になりそうだなぁと思ってます。そこはあと250km我慢です。
白煙が出ない!!
コレはかなり嬉しい。
夜にならし運転をしたんですが、夜中で30km弱走った限りでは、マフラーからの白煙は確認されませんでした。
ボアアップ作業前は、信号待ちの3回に1回位の頻度で、左右どちらか、もしくは両方のマフラーから白煙がモクモクと出ておりまして、エンジンにダメージが出ている兆候がありあり。オイル下がりか、オイル上がりか、はたまた両方か。
今回の作業に当たり、バルブステムシールやバルブガイドも含め、一切合切シール関連を交換してもらいました。おかげで完璧にオイルを止めてくれているのだと思います。まだ油断はできないですが、今のところ安心出来そうです。白煙が出ないって嬉しい(笑)
まとめ
こんな感じで走っていきます。
まあほぼあと半分なので、焦らずジタバタせず、淡々と距離を重ねていきたいと思います。
細かな部分の荒出しや検証をしつつ、いろいろ楽しみながら慣らしていきます。
以上です。
以下、ぜひ読んでほしい参考記事
- 東京⇒宇都宮を、高速道路で時速80kmしか出ないのに、泣きそうになりながら走った記事↓↓
上記の走行直後、150kmしか走っていないのに、オイルを変えたらどうなるのだろう??という検証記事
ほう~なるほどです。
自分は理屈や成り立ちなどカルチャーに疎い人間なので(浅はかともいうw)聞けば納得です。
うちのもセルでの一発目の始動時に連続して廻すよりも短く数度セルボタンを押した方が掛かってました。
離して電圧がプラグに集中した時に爆発力が上がる!
なるほどです。
まず今まで困ったことが無かったうちのLTDですが、唯一プラグに溜まるスラッジ?、ねちっとした異物が付着しているのが心配です。
特に問題は発生していないのですけど気持ち悪いですから。
困ったらMINORUさんにぶつけてみれば良いかと安直に構えている怠け者爺さんでございます。ww
⇒長野BSLTDさん
お久しぶりです。
上記の始動性の悪化は、オイル交換したばかりで少し硬かった+寒かった+プラグの合わせ技じゃないかなと思ってきました。ここ数日暖かくなり、特に労せず始動します。TRカンパニーさんでも普通にエンジンかかってましたし。
長野さんのBLOGの拝見しまして、ネチッとしたものの画像を見ました。何でしょうねあれ??初めてみました。何かが燃焼して変質している感じですね。
ガソリンが良くないか、火花が弱いか…。
自分はハイオク入れてます。専らENEOSです。
あとASウオタニの点火コイルキットを入れていギャップを広げても添加できるようにしているので、プラグギャップは1mm以上でした。より火花の長さ・面積を広げて、ガソリンに触れて爆発する機会を増やしてあげるという狙いです。今はブリスクプラグを使っているので、実際のギャップはもっと広いですが。
あとオイルは何を使われていますか?右側のピストンだけ、燃焼室にオイルが侵入しているとか。まぁそしたら白煙も出るでしょうから・・・・。なんだろうなぁ。少し硬めの鉱物油を使って様子を見るのも手かもしれません。
思いつく所こんな感じですね。
参考になれば!
ご無沙汰してます。たかてす。
ますますお元気にされてらっしゃるようで嬉しいです。
MINORUさんとうとうボアアップされたんですね!
まだ馴らし運転の段階なんですね!どう変化しているのか私も楽しみです。
当方色々とありましてLTDを手離してしまいました・・今はGPZ400Rでバイクライフを楽しんでます。
子供さんも大きくなられたでしょうね。
車種は変わりましたがちょくちょく遊びにきますのでよろしくお願いします。
⇒たかさん
お久しぶりです。コメントありがとうございます。
2月くらいから作業を進めてもらい、4月末に納車されました。
コメントのとおりまだ慣らし中で、高回転域まで使えたらもっと楽しいだろうなぁと思いながら走っているところです。
GPZ400Rに乗り換えですか!空冷最速の4気筒ですね。2回ほどのせてもらったことがあるのですが、よく走ってゴリゴリしたフィールとトルクが楽しかったと記憶しています。
これからもよろしくお願いします!