2017年の9月。とうとう来たかという感じをしたのを覚えています。
がっかりするかなぁと思っていたのですが、思った以上にすんなり受け入れられました。
SR400廃盤の話です。
販売不振も一理あるでしょうが、17年9月から施行される排ガス規制に適合させるのが難しくなったため、いったんモデルを整理するというのが大きな理由のようです。
1978年モデルが初代なので、もう生産開始から39年。すごい話です。
この記事を最初に書いたのが2017年の9月。この段階で、次期モデルの開発が明言されていていました。
そして登場したのが、40年前の姿を全く変えずに空冷エンジンで登場したSR400でした。
自分とSRの思い出
自分も1年位SR400に乗っていました。97年式だったと思います。いわゆる2型ですね。
詳しいインプレッションと言うか、僕が感じた感想はこちらの記事にしこたま書いています。
一番感じたのは「SRって70年代当時のシングルスポーツだったんだなあ」という事でした。
21世紀目線で見るとどこからどう見ても、レトロなルックスと機構のバイク。
だから、「とことこ走る」のが楽しいバイクかと思っていたのですが、そうばかりでもない。
スロットをワイドに開いて、エンジンにムチを入れて高回転をキープし続ければ、しっかりスポーツ走行できるポテンシャルを持っています。
150kgという扱いやすい重量を活かし、ひらひらと体重以上させながら、単気筒ならではのビートを楽しめる。
初心者には優しく、ベテランにも予想外の懐の深さを見せる。そんな間口の広さを持ったマシンだったように思います。
大きな仕様変更
SRはディスクブレーキになったり、キャストホイールが出来たかと思えばスポークドラムになったりと、細かな仕様変更が何度か有りました。
その中でも、何と言っても大きかったのが、2008年に一度販売終了したこと。そして2009年のインジェクション化による販売再開です。
レトロな外観をキープしながら、当時可能だった最新の機器を投入。電子系統の臓物を大きく変更たため各種マウントが変更。
既存のカスタムパーツの取り付けができないという弊害もありました。
ただキックスタートは意地でも残し、メーカーもSRが「SRである理由」をキックに込めているんだと、語らず作りで示してくれた、という歴史がありました。
このインジェクション化による再販があったから、僕は2017年の販売終了の報を受けても、気持ちを整理させやすかったのかもしれません。
SRの砂時計は、30週年の2008年に一回尽きていたわけです。
それが10年分補充され、39年目にしていよいよ最後の一粒まで無くなった。
そしてヤマハさんは、不可能ではないかと思えた排ガス規制に対応すべく文字通り尽力され、再販という形で期待を裏切ってくれました。
ECUは、設定変更にとどまらず、実際のサイズも大きくなってしまい、これまでのサイドカバー内に収まり切らず、シート下に動かさざるを得なかったため、シートボトムを新作して対応しました。
キャニスターは、蒸発ガソリンの外気への排出を低減する装置ですが、どうしても見えるところに配置せざるをえず、いかに小さくデザイン的にきれいに見せるか、SRのスタイリングにマッチさせるかに尽力しました。なるべくエンジンに寄せて一体感を持たせ、吊っているゴムにシボを織り込んでデザインし、さらにホースの配束も何度も見直し、見た目カッコよく、フレームと一体感が出るようにしました。
灯火器類の変更においては、ヘッドライトに使用しているレトロなガラスレンズを近代的なプラスチックに変更するか、かなり議論しましたね。結局、ガラスのヘッドライトは、SRのアイデンティティのひとつであるという結論から、SRに期待し待ってくださっているお客さまがたくさんいらっしゃることを踏まえて、部品メーカーさんにも協力を仰ぎ、ガラスレンズにこだわって新作し、法規対応しました。
僕が想像していた次期モデル
2017年現在で、空冷のまま、水冷化など色んな噂が出ていました。
結果的に空冷で再販されることになったのですが、「欧州規制は対応不可能だろう」と思えるほど厳しいものでした。
セローやトリッカーなども販売終了する話が出ていて、コレを気に車格を下げて、250ccクラスの兄弟車両になる可能性もゼロではない。そんなことまで考えてました。
個人的な次期SRに持っていた希望
レトロルックに媚びるのではなく、現代目線で見た「新たなトラディッショナル」となりうるスポーツバイク。
こういう路線もありなんじゃないかなとか。
そんな事も考えていましたね。
御存知の通り、現在125cc~400cc程度のクラスは、世界的に熱い視線を持って迎えられています。
KTMが小排気量の市場を切り開き、BMWも300ccクラスのマシンを出しました。ホンダもスモールクラスに力を入れ始めています。
日欧の成熟市場と、アジアやインドの成長市場の両方を、大小あらゆるメーカーが狙っています。
国内でも、YZF-3Rという320ccのバイクが販売されたり、スズキのジグサーというバイクは、インド生産の150ccです。
日本国内の法規や税区分にはとらわれず、自由なバイクづくりのスタイル広がってきています。
デザインイメージ
車両コンセプトとしては、例えばXSR900のコンセプトを踏襲する小排気量スポーツ。
名前もSR入ってるし。モジってSRXの復活も面白いです。
ガチ勢はMTシリーズやYZFさん達がいるので、あくまでカジュアルに。
流行りのネオクラシックも悪くないけれど、次世代のトラディッショナル・スタンダードになるような、新たなデザインを提案してほしいなぁと思っていました。
例えばハスクバーナ vitpilen401とか。この系統。
KTM DUKE390のエンジンを搭載したこの車両。
トリッカーのエクストリーム的なテイストが含まれてますけど、こんな感じのアーバンコンセプトのマシンは面白いんじゃないでしょうか。
あと、無難にネオクラシックを進むのであれば、このMVアグスタのSILVER VASE 440ような路線も。
コレとてもかっこいいバイクなのですが、僕の考える時期SRのイメージ像からは、若干レトロに軸足を置きすぎている部分があるかなと。
例えばSRXのようにキャストホイールにするとか、メーターやライト周りなどを少しいじって、都会的な要素を取りいれていくとか。
そういった工夫というか、他ジャンルとのクロスオーバー的要素が入ると、より面白いと感じます。
ただヤマハにはXS-V1 SAKURAという、未だに皆の心に大きな衝撃を残しているコンセプトモデルがありますね。
V型エンジンはBOLTという形で一応の回答が出ています。
ただあちらはアメリカンで、このSAKURAの文脈は踏襲して居るとは言いづらいです。
まかり間違って、SAKURAの市販バージョンが出てきたら・・・なんてことも思っていました。
これは今でもみてみたいです。
まとめ
・・・と言った妄想をしながら、次世代型のSRを待っていました。
まさか最低限の変化点で再登場してくるとは思ってもいませんでした。
ただSRは40年つくり続けてきたことを踏まえ、どうしても変えられない部分がある一方で、法規対応や時代のニーズに応えながら変えるべきところは変えていかなければならず、その変えられない箇所と変えるべき箇所の棲み分けと、その開発には苦労しました。
例えば今回も、セルモーターを付けるか否か議論しました。やはりデコンプレバーを握って、思い切りキックを踏み抜いてエンジンをかける……という儀式がSRの魂でありアイデンティティである。キックでエンジンを始動し、乗り手のモチベーションも高めて行くのがやはりSRの魅力なので、付けなくて正解だと思っています。
変化を求められる所と残すべきところ。ビックネームの重圧。
ヤマハさんの公式HPを読んでいるだけで、このバイクに対してどれほどの思いを重ねて制作に携わられたのかと言うのがつぶさに伝わってきます。
小説家の方とか漫画家の方が、インタビューを受けられる時に、「キャラクターが勝手に動き出す」とおっしゃる方がたくさんいらっしゃいます。 SRもそういう類のものかもしれません。お客さまご自身がそれぞれにつくりあげてきた歴史ですとか、ずっとこう40年間あり続けたSRらしさというものが自らストーリーをつくりあげているんのではないかなという部分もあります。今回のSRは、「SR自身がこうありたい」という姿になったのではないかと感じています。
そしてこの引用した文章を読んで、SRは確固たるブランドと品格があるのはもちろん、そして集合無意識によって作られた「ある種の人格までもが備わったバイク」なんだということを感じました。
こんなバイクがまだ生産されること、そして一緒に走ることができるという事実がたまらなく嬉しくなりました。
ヤマハの技術者さん、製造に携わるすべての方に感謝したいと思います。
以上です。
SRシリーズイイですよね~
モデルチェンジの噂は色々ありますが、ヤマハHPにあるSRの開発ストーリーにFI化の際の開発者の苦労話が載っています。
https://www.yamaha-motor.co.jp/mc/lineup/sr400/story.html
次モデルは以下の3点が必須条件と言われてます。
車載式故障診断システム(OBD)搭載
EURO5対応
前後ABS搭載
EURO5なんて排ガスが北京市内の大気より綺麗になって出てくるほど厳しいそうですので・・・
いよいよオールニューモデル投入で伝統のデザインを捨てるのかな?
⇒ポイシュガポフさん
排ガス規制にODB端子対応となると、制御系作り直しに近くなるので、このタイミングでの販売終了は妥当でしょうね。
記事ではああ書きましたが、次世代機が「誰がどう見てもSRだね!」というルックスで出てきても、それはそれで面白いかもしれませんね。
次世代のトラッドの姿を、妥協なく提示してくれたら、バイク業界にも呼び水になるんじゃなかろうかと思ったりします。