にぎわいににぎわった、2017年のパイオニアランジャパン。
毎回テーマを決めているわけでは無いものの、趣旨に賛同してくださった皆様が、それぞれ素晴らしい車両を持ってきてくれました。
あるときはずらりとCB72が並んだり、やたらと陸王やラビットが並んだりと年によって様々です。
今回はメグロが多かったような気がします。
自分のハイライト
僕個人のハイライトは、PRJ主宰の齋藤さんが持ってきてくれた、ライラックに乗せてもらった事でした。
ライラックLS18。250cccのV型二気筒です。
GL500を一度所有して以来、縦置きVツインというエンジン型式について思い入れがありました。
それに加えてライラックは、その名前と生い立ち、丸正自動車と伊藤さんの歴史、そして実用車らしからぬこだわりぬかれて造られた造形美など、僕の心をつかんで離さない車両です。
そのマシンに乗せてもらって、会場をぐるりと回ることができました。
発進が難しい
最初に面食らったのがスタートでした。
どうもクラッチが単板の様で、半クラッチがとても難しい。ジワーッと進むにはちょっと練習が必要です。
かなり原始的な構造のシャフトドライブなので、チェーンのたるみと言うか遊びみたいなのも無いので余計にシビア。
また1950年代のマシンのミッションの入りが悪く、ギアが入っているのか抜けているのか判別に苦しみました。
ニュートラルかと思ったら実は1速でエンストこいたり、逆にニュートラルからギアが下がっていなくて空ぶかししたり。
旧車初心者丸出し。
踏みこむ際も、手で優しく操作してあげるような、ある種のいたわりが必要です。
というわけで、最初走り出す事すらままならない。
が、1速に入ったことを確認し、かなり吹かし気味にスロットルをあおってクラッチを繋ぐ。そうしたら、リアタイヤが砂利道を少し削りながらライラックが駆け出しました。
縦置きエンジン独特のトルクリアクションは特になかったです。これは意外。
全体的に感じられたのは、旧車独特のガサツさが極めて薄い、とても優しい乗り味でした。
ホンダバイクの様な、爆発力をちゃんと部品が受け止めて回転力に変えていますよ~ という精密さ・緻密さのような感覚とはまた違う。 排気音もおとなしく、ライダーを急かすようなエンジンフィールは皆無です。
バイクを擬人化するのであれば、「淡々と仕事をこなす、信頼できる仕事の丁寧な職人さん」のような印象を感じました。仕事ぶりに色気を感じるというか。
凝った作り
50年代のマシンなので、作りが凝りに凝っています。
このガンメタリックのカラーは、当時の純正色だそうです。黒じゃなくてあえてのガンメタ。
シートも下にスプリングが入っている旧い方式でしたが、座り心地は良好。
この燃料コック一つとっても、作りがとても丁寧です。
写真にうまく収められていなかったのですが、レバーの先端に、「止」「開」の文字がオモテウラで刻印されていました。
金型に文字を彫っているんですね。信じられないです。
1950年代のセルスタート
機構的にも面白く、ボタン一つでセルフスタートができます。が、セルモーターらしきものがどこにもありません。
齋藤さんに聞いてみると、オルタネーターがスターターの役割を兼ねているとのこと。
このエンジン先端の鍋の様な蓋の中に、巨大なアーマチュア(回転子)が入っています。
エンジンが回っている時はクランクの回転力で電気を作り、逆に電気を送り込んであげるとモーターのように回転する仕組みです。
極めて合理的。キュルキュル!というセルの音がせず、グワーンという低い音がしてじわりとエンジンがかかる、不思議な感覚でした。
ただ1950年代当時はアーマチャーの出力が弱く、クランクを回転させるだけのエネルギーを発生させるには、機構を巨大化させざるを得なかったようです。
のちのバイクがセルモーターとオルタネーターを分けているのは、役割分担したほうが小型軽量になるからでしょう。
ハイブリッドシステムの先鞭
しかしながらこの構造を見ていて思ったのが、今のモーター付き発電機を使用したハイブリッド、具体的にはスズキさんのエネチャージと同じシステムなんですよね。
- 始動時はISG(Integrated starter generator)のモーター機能で始動
- 加速時や最大速度時は、モーターでエンジンをアシスト
- 巡航時や減速時は、ISGを発電機(オルタネーター)として使うことでエネルギーを改修
まぁここまで高級なシステムではないにしろ、ライラックのオルタネーターは始動用モーターの役割も兼ねているわけです。
温故知新とはこのことだなと。旧いものを今の技術目線で見直すと、色んな発見がある。それを体感させてもらいました。
まとめ
美しく優しいデザインのライラック。
少なくともこの1年くらいは、LTD1台あれば十分すぎるなんと思っていましたが、このバイクに限っては、機会があれば手元に置いておきたいなぁなんて思ってしまいました。
そんな刺激をもらえる体験をさせてもらえた、僕の2017年パイオニアランでした。
以上です。
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