購入したグラストラッカーには、製造からわずか1年落ちでほぼ未走行のフロントタイヤが装着されていました。
タイヤの表面には、トレッド面の「ヒゲ」や「線」がまだうっすらと残っているようなコンディションです。 どうやら前オーナーが、売却前にフロントタイヤだけは新品に交換してくれていたようでした。
グラストラッカー・ビッグボーイ(Bigboy)の純正フロントタイヤは、ダートトラッカーの定番である「DUNLOP K180」。サイズは19インチ(100/90-19)です。
昨今の物価高もあり、このサイズのタイヤとチューブを自分で買い揃えて交換しようとすると、それだけで2万円近くの出費になります。ここは素直にありがたいなと思っていました。
恐怖の上下ガクガクと、発覚した原因
一通りの給排気メンテが終わり、ようやく公道をまともに走れるようになってからのことです。
ガソリンスタンドに立ち寄り、100kPaとかなり低めだったフロントタイヤの空気圧を、規定の200kPa程度に調整しました。そして走り出した直後、車体に異変が起きました。

走ると、フロント周りが上下に「ガクガク、ガタガタ」と激しくピッチングを始めたのです。 スピードを上げるにつれてその振動は増幅し、とてもじゃないですがまともに走れる状態ではありませんでした。
「ホイールのバランスが狂っているのか? それともフロントフォークか?」
慌てて路肩にバイクを止め、フロントタイヤのリムの隙間をぐるりと一周、凝視しました。そこで原因が発覚します。

https://ride-hack.jp/?p=2419 引用元:RIDE HACK様
タイヤの「ビード」が、ホイールのリムに正しく上がっていなかったのです。しかも、ご丁寧に左右で1箇所ずつ、綺麗に落ちたままになっていました。
タイヤが綺麗な真円ではなく、一部が凹んだ「楕円」のような状態で組まれていたわけです。
…上がり切っていなかったときの写真を撮影し忘れていたので、ビードの断面図をお借りしました
おそらく前オーナーは、フロントタイヤを交換したはいいものの、その後のキャブセッティングなどで泥沼にハマって作業が止まり、ビードが上がりきっていないことに気づかないまま(あるいは気づいていながらも)、力尽きて車両を売りに出したのでしょう。
そう考えると、このタイヤは文字通り「交換直後の本当の新品」だったのかもしれません。
2. DIYの限界と、400kPaの恐怖

https://2rinkan.jp/ridersacademy/archives/774/ 引用元:2りんかん様
原因が分かれば、やるべきことはシンプルです。ビードを規定の位置まで「上げる」しかありません。 手持ちのスプレーボトルに石鹸水を詰めて再びガソリンスタンドへと出向き、ビードが落ちている部分に塗布しました。そしてコンプレッサーのノズルを繋ぎ、圧力をグングン上げていきます。
300kPa……350kPa……400kPa……。
普段の指定空気圧の倍以上の圧力をかけていきますが、タイヤはピクリとも動きません。この位の圧力をかけても大丈夫なのは頭ではわかっているものの、正直怖かったです。破裂の恐怖に身をすくめながらしばらく放置してみましたが、結局ビードは頑として上がってくれませんでした。
持つべきものは、地域のプロショップ
自分一人のDIYではこれ以上は無理だと判断し、地元・益子町にあるタイヤのプロショップへとグラストラッカーを駆け込ませることにしました。
セイユータイヤサービスさん。車のタイヤ交換でもお世話になっている、いかにも職人気質といった佇まいの寡黙なおじさんのお店です。
フロントタイヤを見るなり、「なんじゃこりゃ??」「ひどい組み方だ」と、呆れ果てたような声を漏らしていました。
作業は手際よく進められました。
一度タイヤの空気を完全に抜き去ると、バルブの「虫(バルブコア)」を取り外します。空気の流入量を最大化するためのセッティングです。そして、リムとビードの隙間に石鹸水をこれでもかとスプレー噴射。
そこから一気にコンプレッサーの空気を流し込み、メーターは500kPaを突破。

次の瞬間、ショップガレージ内に「バコン!!!」という、鼓膜を突き刺すような凄まじい破裂音が響き渡りました。
見ると落ちていたビードの片側が見事にリムへと這い上がっていました。
おじさんは表情一つ変えず、少しタイヤを回転させて位置を調整すると、流れるようにもう1トライ。再び「バコン!!!」と音がして、左右両方のビードが完璧にリムへと収まりました。ものの数分でした。

「持つべきものは、街の頼れるプロショップだな」
と、職人の背中に向かって心から感謝した瞬間でした。作業工賃をお支払いし、晴れやかな気分でショップを後にします。
収まった振動と、残る違和感(今後の宿題)
タイヤが本来の「真円」を取り戻したことで、あの不快なガクガク振動は見事に消え去りました。
しかし、トラブルが解決した一方で、新たな違和感が頭をもたげています。
低速域でタイトに曲がろうとした際、ハンドルが妙に抵抗を見せるというか、ものすごく「曲がりにくい」感覚が残っているのです。
低速での曲がりにくさについては、2つの原因を疑っています。
【推定原因】
タイヤの「変な癖」
ビードが落ちた状態や、空気圧が低いまま長く放置されていたため、ゴム自体に変形癖がついている可能性です。実際、トラブル解決後に少しずつ走り込んでいくと、違和感はだんだん薄れてきました。徐々にタイヤが本来の形に馴染んできているのかもしれません。ステムベアリングのサビや寿命
もう一つの原因は、フロントの軸にあたる「ステムベアリング」の劣化です。25年選手なので、グリス切れやサビ、金属部分の凹みでハンドリングが悪くなっている可能性は十分にあります。(一応、前オーナーは「バイク屋で整備してもらった」と言ってはいたのですが……)
いずれにせよ、フロント周りを完璧にするには、いずれステムベアリングの分解・メンテは避けて通れなそうです。
とはいえ、エンジンに続いて足回りの致命的な爆弾も一つ処理できました。 しばらくはタイヤの様子を見ながら、無理せずじっくりと走らせていきます。
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作業日:2026年2月
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かかった費用:500円(ショップの作業代)
↓グラストラッカーの整備記録をまとめたページ


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