フロントブレーキのオーバーホール

 

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Z400LTDのフロントブレーキのオーバーホールが完了しました。

今回やった整備は、キャリパーのゴム部品を全部入れ替えです。

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炎天下で日陰なしの場所だったので汗だらだら。

直射日光が痛かったです。 実施内容を、備忘録代わりにレポートしたいと思います。

 

内容の一覧

内容自体は極々単純。 以下の流れに沿って作業を行いました。

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  1. フロントのキャリパーを外します
  2. ブレーキパッドを外します
  3. ピストンを外します
  4. キャリパーを洗浄します
  5. モリブデングリス(※ シリコングリスが正解)を塗布し、ゴム部品を新品にします  
  6. 部品を元通りに組み付けて、フルードを注入します
  7. エア抜きします

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※:ゴムへのアタック性や摺動抵抗の面から考えると、 モリブデングリスよりもシリコングリスのほうが良いそうです。
mmおやじさんからのコメントより。情報提供ありがとうございました!

こうやって書き並べると、簡単な作業の繰り返しです。

実際は暑いしネジは硬いしグリスまみれになるしで、結構大変です。 まぁ個人的には、ギリギリ楽しいと思えるレベルの作業だと思います。

コレもシングルディスクの片押し1podキャリパーだからであって、 ダブルディスクで対向6POD×2とかだったら、 「お店に任せよう!」と即決する位やる気がでないだろうと思います。。

では作業開始です。

 

 

 

ステップ1.前準備

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■まずフロントフォークからキャリパーを外すんですが、 この段階でフルードがピストンから漏れていました。

写真のシミが漏れたフルード。 完全にピストンシールが死んでますね。 ローターディスクにフルードが常時当たるようになると、ブレーキが効かなくなったり戻らなくなったりして、死の危険があり注意が必要です。

 

ステップ2. 部品を全て外す

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どんどん作業を進めましょう。 次にブレーキパッドを外します。これはキャリパーを外し、裏のネジ1本で固定されています。

 

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ダストシールが濡れています。 湿ったように見えるのは、全部フルードです。

 

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キャリパーのについているボルト2本を取り外します。こうすることで、ブレーキパッドが取付けられている、ピストンに押されてスライドするプレート(スライドピンと言うにはゴツイ)を外すことが出来ます。

 

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穴を確認してみると、ブレーキダストでかなりげろげろです。

内径にO-ringが入っているのですが、圧縮永久ひずみが発生して、 目視で締め代がなくなっていました。グリスもどこかに逃げています。 こんな状態じゃ動きが悪いでしょう。

 

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キャリパーの内部ももダストでげろげろ。汚い。

掃除のしがいがありますね。。。

 

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■このピストンが露出した状態で繰り返しブレーキを握っていくと、 フルードが圧送されてピストンがどんどん出てきます。

何度もやると最終的にピストンが外れます。

 

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ピストンが外れました。 同時にフルードが溢れてきました。

 

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地面はフルードまみれでエライコッチャです。

ちゃんと下にダンボールとビニールを敷いていて良かった。 準備の勝利。

 

 

ステップ3. 状況確認

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ピストンホールの、O-ringから外側は錆だらけでした。状態はあまり良くないです。

ただO-ringから内側に関しては、汚れが多少目立つもののまぁまぁといった感じ。サビがなかったのが救いです。パーツクリーナーで汚れを落として、丁寧に拭きあげすればなんとかなるでしょう。

 

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肝心のピストンは、

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入口側のサビが結構酷いです。

ただここはダストシールの外側の部分。常時水やらごみやらが露出する部分で有り、摺動面ではない。 なので、最悪錆びていてもギリギリOKと考えます。

 

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裏面は常にフルードに浸っているためか、 サビ一つなく綺麗な状態でした。

 

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問題は側面。 一旦室内に持って行って、中性洗剤で洗浄した後の様子。

 

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完全に凹み傷です。あー、こりゃどうしようもないわ。

めっき層を突き破って下地の金属が腐食しています。 そこが食われて凹サビに。 完全に摺動面だけど、、、 見なかったことにしてそのまま再利用します。 フルード浸ってたら錆びないでしょう。 新品ピストン4000円もするみたいだし。。

 

ステップ4.洗浄

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■ここから洗浄です。

パーツクリーナーを盛大に使ってガンガン汚れを落とします。 キャリパー本体、ピストン、スライドプレート、ネジ、 全てを洗います。 汚れを全部洗い流します。

 

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細かいところは、花咲Gを塗布して歯ブラシでゴシゴシ。

本当はもっと目の細かいコンパウンドが欲しかったんですが、 手持ちがコレしか無かったんで仕方なく。

磨き傷を落とすようなワックス効果があるコンパウンドで、 サビ落としして何の意味があるのか…?とか思ったりもしたんですが、 しょうがないのでガンガン磨きます。

 

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丁寧に実践したお陰か、かなり綺麗になりました。

 

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ピストンの摺動面に入っていたリング。

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手前が新品です。

出てきた時、「O-ringが真四角になっとる!!」と思ったのですが、 新品も四角い形状でした。 やっぱり新品のほうが多少厚みがあります。 これにモリブデングリス(シリコングリスがベター)をしっかり塗って、 キャリパーにはめ込みます。

 

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スライドプレートには2個の穴があり、 その内部をモリブデングリスシリコングリスがベター)で満遍なく埋めます。 グリスを閉じ込めておくO-ringが入っているので、それも新品に交換。 この辺から両手がグリスまみれです。 

 

ステップ5. ピストンの組み立て

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■綺麗になったピストンを、 先ほどのゴムリングを取り付けたマスターシリンダーに組み付けます。

はめ込んだら、ブレーキフルードをマスターシリンダーから注入。 一番大事なエア抜き行程です。 で、このエア抜きなんですが…・

 

ステップ6.エア抜き

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最初はこんなかんじで、 キャリパーのニップルに燃料ホースを取り付けて、

 

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ブレーキレバーを握って握って、ニップルを緩めて気泡を出して…

ということを何回も繰り返す方法で行なっていました。 コレでたいがいのエアは抜けるだろうと思っていたんです。 フルードを入れた最初は、エアを噛みまくって全くピストンが動かなかったんですが、段々繰り返しているうちにピストンが動くようになりました。

動き出すまでに10分くらいかかったのは流石に焦りましたが。。 で、結果抜けていませんでした。その詳細はまた後で。

 

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飛び出てきたピストンはウォータープライヤーでおもいっきり押し込んで、元の位置に戻します。戻す前には、ピストンの周りにモリブデングリス(シリコングリスがベター)を繰り返し塗布しておくことで、ピストンの動きがだいぶなめらかになります。

 

 

ステップ7.元通りに組み付け

■この辺になると手がグリスまみれもいいところ。 熱中症になりそうなくらい太陽が照りつけていたので、 写真を撮影する余裕はありませんでした。

なので写真は無し。アシスタントが欲しいです。

組み付けで難儀したのは、ダストシールのみ。 ダストシールが中々上手く取付けられなくて、本作業の中で最高にイライラしました。一回裏返して、おもいっきり引っ張って奥のほうから爪に引っ掛けるようにすると、多少やりやすいことがわかりました。 でももう二度とやりたくないです(悲

 

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ブレーキパッドやスライドプレートを元通りに組み付けて、 アウターブーツに取り付けたら完成!作業終了!!

 

ステップ8.試走

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■翌日、ちょっと市内を散歩しようと思い、 ついでにブレーキのOHの効果を確認しました。

ぐにゅ! ぐにゅ! は、なんだれこれ?? (゚⊿゚) ぐにゅ! ぐにゅ! えぇ、OH前のほうが全然効きがいいぞ? 止まらない。全然止まらないよLTD。

アレだけ手間と時間掛けて全然ダメなの(;゚д゚)ェ… あ、でも握力勝負でおもいっきし握りこんだら、 気持ち効いている素振りが有るなぁ。。 ということで散歩のコースを変更して、近所の南海部品へ。

 

ステップ9.注射器でのエア抜き

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以前先輩から、

注射器使えばエア抜きは一発だよ」と言われていたのを思い出して、

コレしか無いと思い買ってみることにしました。

 

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こんなかんじでニップルにホースを取り付けて、 押し込まれた状態の注射器を引っ張ってホース内に負圧を発生させて、 ニップルの根本のナットを緩めます。

 

ぶば! すばばばばばばばばばば!!!  びびっびびびびびび!!!  

 _, ._ ( ゚ Д゚) あぁ??

 

…全然エア抜けてなかったじゃん。

 

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写真ではわかりにくいんですが、次から次へと出てくる大粒の気泡。

ほんとにおならのような音を出しながら吹き出てくるフルード。 どこにこんなエアが溜まっていたのか。 おそらくキャリパー内部のエアが全然抜けていなかったみたいです。これだけ溜まっていたらそりゃ効かないよ。 こんな豪快なエア抜きは初めてだ(苦笑

エアの量が多すぎて1回では抜け切れなかったのですが、 3回くらい同じ作業を繰り返したら、あと出てくるのは綺麗なフルード。 完全にエアは抜けました。 その後乗ってみたら、

 

brakeburn.jpg (画像はイメージです)

 

止まる! フロントブレーキだけで減速できる! これは画期的なことです。

これまでは、「右足とリアブレーキはお友達」「7:3でリアを使いましょう」が定説だった僕のLTDですが、フロントブレーキだけでも60km/hから安全に減速できるんです。コレは画期的なことです。 抜群に効くようになったわけではないものの、 確実にOH前よりタッチも効きも良くなりました。 うん、コレはやったかいがあったわ。

 

まとめ

■ということで長々と書きましたが、 フロントブレーキのOHについては以上です。

今回勉強になったのは、フルード交換する際は注射器使ったほうが絶対的に楽だということです。時間と確実性が圧倒的に違います。 注射器の偉大さに触れることができてよかったです。 注射器をたたえましょう。注射器を崇めましょう。 注射器こそがライダーを救う。

 

以上です。

13 件のコメント

  • お疲れちゃんでした。
    熱中症にならずに良かったね。
    私も負圧で抜き取るワンマンブリーダーを愛用しています。
    これで99%完了。あとはブレーキレバーを握った状態でバンド(ベルト)止めしてフルードにストレスを掛けたまま一晩放置すると翌朝にはカチッと効くのが分りました。
    チマチマ握って離してやっていた時間を返せ!の勢いで終了。フルードも最小量で済んじゃうし。
    コーナーへの突っ込みも安心だね。

  • ⇒長野BS LTDさん
    ホントあっという間に終わります。
    500円くらいからで売ってるので、ケチらないほうが確実で早く完了しますね。
    バンド留めも今度やってみます。
    ありがとうございました。

  • 通常モリブデングリースは圧力・熱によって油膜が切れないよう耐圧性の必要な部分に使うと思います、更にステン同士とか、チタン同士の結合など かじりやすい材質の潤滑などには銅の成分の入ったグリースが良いですね 今回のブレーキキャリパーの条件はそこそこの耐熱性そして耐水性 なによりもゴム関係を痛めない能力等 を考えると シリコングリースが良いのではないかと思います、、、、ゴムに適さないものを使うとキャリパーメインシール(オイルシール)ダストシールが犯されて ふやけて 膨張した場合ピストンに無駄な(ラジアル方向への)圧力が絶えずかかりピストンの出し入れの動きが阻害されます(溝にゴミ.サビが溜まった場合でもそうですが)
    そうなるとブレーキをかけた後の解除後も正常ならば車輪が一回転した後は通常位置にピストンは戻るのですが 動きが阻害されていると戻らずローターを引きずったまま(圧力を掛けたまま)になります
    ローター.キャリパーにも熱が溜まります

  • ⇒mmおやじさん
    コメントありがとうございます。
    グリスに関しては、自分も何を使うか最期まで悩んでいました。
    モリブデンでOKという人や、mmおやじさんのようにシリコンのほうがベターだという人が居たりで、結局モリブデンを使った次第です。
    今回シール材のゴム材がよくわからないんですが、シリコンが使えるかどうか悩みどころでした。モリブデングリスのゴムへのアタックって大きいのでしょうか?
    時間を見てまた分解し、
    グリスの塗り替えもやってみたいと思います。
    エア抜きも楽勝になったので。
    ありがとうございました。

  • 実際カワサキ系のSMを紐解いてみると、マスターシリンダーとかキャリパースライドピンとかブレーキレバーピボットピンとか「耐水性(水に流れてはまずい)」の必要な所はシリコングリースまたはPBC(樹脂)グリースを塗布。リヤドラムブレーキ内のカムの軸とか当たり面とかRブレーキペダル軸とかの強い圧力のかかる所は
    (モリブデンとかの)耐圧耐熱グリースを塗布する事になっているようです。 耐水性耐熱性耐圧性を考えながら適材適所に使うのがベストなのかもしれません ブレーキキャリパーのオイルシールは「ブレーキフルードのみ」の塗布になっていますね。ですからキャリパーのシール材は場所柄耐水性のものは使われているでしょうが
    耐油性はどうなんでしょうね? 
    キャリパーをメンテナンス&分解掃除する時は 溶材を含むパーツクリーナーとかCR◯55六とかキャブクリーナーなどでの洗浄は御法度ですゴム類を痛めます 一番良いのは 家庭用のママ◯モンなどの中性洗剤(ゴムにやさしい)
    と中古の歯ブラシですね~ 洗浄後によく(ドライヤー等で)乾燥して水分を完全に取り去ってから 各油脂類を塗布しながら組立てです
    シリコン系は水をはじく、流れない、ので色々な所で使えますよ ただ タイヤは側面には綺麗に保って良いですが接地面はダメだったり 車のウインドガラスなんかは最悪になります
     

  • ⇒mmおやじさん
    詳しい解説有難う御座います。
    キャリパー周りはシリコングリス一択のようですね。。
    分解清掃時は、部品の汚れがあまりにも酷かったので、パーツクリーナーを使ってしまいました。
    勿論ゴム部品は全交換するのが前提でしたけど。
    ピストンは中性洗剤で洗浄し、
    ボアの中も最後は中性洗剤で水洗いしています。
    一応気を使ったんですが、
    写真撮影していなかったので端折りました。
    よくシリコンスプレーを、
    艶出しでゴム部品に吹きかけていたのを思い出しました。
    ゴムのマニホールドとか。
    そう考えればゴムに優しい材質ですよね。

  • さすがです。
    いつも拝見してます。
    なかなか自分では出来ないのですが,参考にさせてもらってます。
    ちなみにフロントフォークについてなんですが、オイル漏れして来て、なかなかパーツが見つからず,何か流用出来るものありますか?バイク屋さんもわからないところが多くて、、、

  • ⇒chiroさん
    コメントありがとうございます。
    フロントフォークのオイル漏れということですが、
    流用するのはフォークシールでしょうか?
    それともフロントフォーク本体でしょうか?
    シールならまだメーカー在庫があるはずですので、
    ご希望であれば型番をお伝えすることは可能です。
    フォーク本体となると、なかなか難しいかもしれませんね。。
    フロントフォーク自体は、基本的にZ1Z2時代のφ36がそのまま使われてきたはずです。 あとホイールトラベルは150mm程度だったと思います。φ36のものだったら、加工前提だと思いますが流用可能でしょう。
    ↓こちらのサイトに各種バイクのフォーク径がまとめてあります。
    http://creator.kappe.co.jp/~n-ten/mc/etc/ffork.html
    ・・・いずれにしろ旧車珍車ばかりで見つけるのは大変そうですが、
    参考になればと思います。
    何かありましたらまたご連絡ください。
    よろしくお願いします。

  • フォーク本体も欲しいですが。
    とりあえずシールで出来るだけ頑張ってみたいです。
    とりあえずは、まだだましだまし乗る方向です。
    シールの型番教えてください。御願いします。
    いいバイクですね、ltdどうしても手放せなくて,出来るだけ長く乗りたいので,御願いします。

  • ⇒chiroさん
    アウターダストシール 44010-030
    オイルシール ストッパーリング 44043-057
    オイルシール 44009-022
    スペーサー 92026-1005
    以上になります。
    リンクまとめに記載している、カワサキ純正部品検索を見たところ、
    スペーサーは廃盤のようです。
    それ以外は在庫がありました。
    φ36のスペーサーは流用できる可能性が高いので、
    そちらをあたってみるのも手かと思います。
    よろしくお願いします。

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