旧車のトライアンフのT120に試乗させてもらいました

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以前CB750に乗られていたIさんが、旧いトライアンフに乗り換えられました。

IさんのCB750K2と一緒に走った記事

以前からずっと一緒に走りたいと思っていました。1月の3連休急でしたが声を掛けて、一緒にショートツーリング出来ることになりました。すごい嬉しかったです。

 

幸運なことに、Iさんの配慮でT120に乗せてもらいました。

写真にキャプションをつけると共に、乗り味のインプレッションをさせていただきたいと思います。

 

フルカスタムされたトライアンフ T120

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本革製のピリオン&サドルシート。スタイリッシュな縦リブ入り。タンクは当時ものの、数年間しか生産されなかったとても貴重なアメリカ向け仕様とのこと。

このトライアンフ。それはそれはIさんのこだわりが詰まった車両でした。

Iさん自身が、Triumpher Blogさんなどに登場する、多数のチョップされたトライアンフに刺激されて、パーツを選定して車両を仕上げられたとのことです。色々と紹介してくれるIさんのべしゃりのトーンが終始上がりっぱなしで、とても楽しそうで嬉しそうだったのがとても印象的でした。

 

 

ちなみにIさんのトライアンフT120は、68年式の車両。

元々のトライアンフT120は、微妙に年式が違いますが、こんな感じのマシンです。

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ミッションは一体型。650ccのOHV2気筒のマシンです。正直トライアンフにはあまり明るくないのですが、こういう雰囲気の車両なのは間違いないと思います。。間違っていたらご指摘のほどよろしくお願いします。

 

 

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思えば現行含め、初めてのトライアンフ体験です。
1968年式。公道走行するのは、何気に一番古いマシンかもしれません。

これまた初体験の右足シフトと、異常に重いクラッチに少し戸惑いながらも、走り出しました。

 

 

縦振動で脳が揺れた

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走り出して加速していった際に感じたのが、強烈なエンジンの縦揺れでした。50km/h位で巡航したら、脳が揺れます。冗談抜きで。

首の後ろの襟足の付近、ここの筋肉がびくびくと震えて、視界が上下するんです。

 

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そしてステップが可倒式ではないので、足がびりびりと震えました。Z400LTDも80km/h 5000rpmくらいの高回転までぶん回すと、足がしびれるような微振動・ジャダーに見舞われるんですが、トラは40km/hでLTDの2倍くらいの振動が来ました。

「うわ、やばいなこのバイク。」 「このバイク本当に楽しいのか?」

と正直思いました。

 

 

ところが回転を上げると・・・・

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でも不思議なことに、ギアを右足でかき上げて加速していくと、その振動がだんだん小さくなって、とても心地よいビートになっていくんです。

バッカン!バッカン!という小刻みな振動が、バタバタ、バタババババッーーーー!と高回転型のそれに変わります。瞬間的に法定速度の35%増しくらいの速度まで到達したんですが、全然エンジンはぜんぜん余裕。

ブリブリ音を立てながら、まだまだ回りますよって感じがビシビシ伝わってくる。かなりパーツ外されて軽量化しているのもあるでしょうが、いい加速する。

 

なんだ、面白いぞ、そして意外と速いぞこのバイク。

 

感覚的に160km/h位までは、余裕で突っ走る感じがしました。ただ高回転型のエンジンにありがちな、「エンジンに急かされる感じ」が全くしないのが、とても不思議な感じでした。

 

 

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そして僕が一番驚いたのが、時速30km/hでも面白いこと。

心地よい、ずっとこの速度で走っていたいと感じられたんです。普通のバイクなら、30km/h走行を強要されたとなると、

「うわだるいなぁ」「遅いなぁ」

と思うんですが、T120は違いました。低速域では、エンジンがドロンドロンと不思議なほど芳醇なトルクをあふれさせてくるんです。

そのトルク感たるや。めちゃめちゃ気持ちいい。

何だこのバイク? と、2度驚きました。

 

 

 

遅い楽しさと速い楽しさの両立

僕は今までこんなバイクに乗ったことはありませんでした。

僕が乗ったバイクは、遅いか速いかのどっちか

  • 遅いバイクで散歩するのは楽しいけれど、高速がびりびりして辛い。
  • 逆に速いバイクは、低速域はストレスそのもので、エンジンぶん回さないと面白くない。

このどっちかだったんです。

 

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でもトライアンフは違いました

だらだら走っても、トルクを味わうゆっくりとした走りができて楽しいし、スロットルを開けたらその分ぐいぐい加速していく面白さがある。

僕の中で、低速と高速の楽しさの両立は、そう反する概念で実現不可能なものだと思っていたんです。これを両立しているマシンがあったのか!?しかも50年前のバイクで! 素直にびっくりしてしまいました。

 

形容するなれば・・・

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ハーレーのスポーツスターが、低回転から高回転まで、タイヤがダッダッダッ!!と地面を蹴り飛ばす様を感じながら走るバイク。

 

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ロイヤルエンフィールドが、クランクが股下でくるくると、何時までも回転運動し続けるのを感じながら走るバイク。

 

とすればこのトライアンフは、

すべての速度域で、2個のピストンが上下運動するのを感じながら走るバイク

とでも形容できるバイクでした。

 

 

バーチカルツインとはよく言ったもんだ

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いやほんとに。

クランクケースに対して垂直にピストンがそそり立っているから、というのがバーチカルツインという命名の有力な説なんですが、個人的になんかこう納得できなかったんですね。腑に落ちないというか。

でも乗ってわかった。ピストンが垂直上下運動するのをまざまざと感じられるから、バーチカルツインなんだ。勝手に僕の中で自己解決できました。

 

 

 

そして感じた既視感

そして、

僕の中でこの乗り味に、どこか懐かしい記憶をくすぐられたんですね。

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  • 幅広いハンドル
  • エンジン由来の上下に響く振動
  • 低速時の豊かなトルク感
  • 固いけど乗り心地が悪くないホールド感のあるシート

これはなんだ?

 

 

あぁ!これは耕耘機だ!

 

もっと言えばテーラーだ

この縦揺れのビートとトルク。まさにおじいちゃんに昔運転させてもらった、台車付の耕耘機、テーラーだ!!

 

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テーラー: 参照元リンク: http://goo.gl/PrQx5K

 

時速40㎞前後で走っている時の縦揺れの感じは、まさにテーラーそのもの。

バイクというより農耕器具を操作している感覚。

超牧歌的なんです。

 

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でもこれでスロットルを思い切り開くと、1960年代初頭に世界最速を誇った性能の片鱗を見せるんですよね。

何ですか、この矛盾を内包して、そしてさらに昇華しているようなマシンは。

 

 

旧いトライアンフは面白い

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ちょっとだけしか乗れませんでしたが、とても面白かったです。

右シフトは慣れなくてぎくしゃくしたし、工作精度と設計の古さ故、ラフなシフトワークだと「ガーッ」と異音がしてギアが入らなかったりするんですが、それを除けばまぁ普通に走る。パワーも十分。4速しかないミッションも、エンジン自体のトルクの太さと、ギアの守備範囲の広さからそこまで神経質なギアセレクトをしなくてもいい。

 

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フロント2リーディングのエアスクープ付きのドラムブレーキは、軽量な車両には十分すぎる制動力を発揮する。
全速度域で面白いライディングフィール。

どれも素晴らしかった。

 

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いやほんと、LTDが普通のバイクに感じるくらい。T120に乗った後は、味気ない現代車にしか感じませんでした(笑)

新年早々、こんなに楽しいマシンに乗らせてくれて、本当に感謝しています。

 

 

 

こういうバイクを作るべき。割と真剣に。

ここからは私の心の声です。

 

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バイク離れとかが叫ばれていたりする反面、旧車の人気がじわじわと高まり続けていたりする昨今。

実際に50年前のマシンに乗って感じた、刺激的なライディングフィールはとても魅力的でした。

  • 至れり尽くせりではない感じとか
  • 不安定な感じとか
  • 洗練されていない荒々しさとか
  • マシンのご機嫌を伺いながら加速していく感じとか
  • 少し使えた時の面白さとか

現代のよく出来たいい子ちゃんには無いじゃじゃ馬っぽさが、「こいつ面白いなぁ」と逆にめちゃくちゃ好意的に捉えられたんですね。

 

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現代車でこのテイストを完全再現するのは不可能だとしても、方向性とかテイストはこっち方面にむけられないのかと思うんです。

難しい壁は色々あるのはわかっています。音や排ガス関係の法規制とか、メーカーの品質基準とか。

あとは「当時の最新技術を駆使し、頑張って作ったのがこの豪快な車両」というファクターがとても大きくて、今作ったところで「演出」「味付けという的を得ないデコレーション」にしかならない可能性が高い、という危惧もあります。色々と大変なのはわかるんですが、そこをなんとかね。ホームラン狙ってフルスイングできないかなぁと。

 

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そういうのを上手く作ることができたら、お金持っている人が最初に振り向いて、その後若い人も憧れると思います。

お金が無い分こだわりとかが強くなってきているので、ブランドに拘らず、「いいもの」や「楽しそうなもの」を見極める審美眼を持つに原画、若い人の間でもじわじわ育って根付いてきて居ると思うんです。だからヤマハさんとかカワサキさんあたりが、一発今までの国産プロダクトの概念を吹き飛ばす、エンジンと車体の新規設計してもらえませんか?

T120降りてからというもの、好き勝手にずーっとそんなことを考えていました(笑)

 

 

まとめ

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重ねて言いますが、本当に楽しい体験でした。

ここ5年くらいで、

英車!英車!
BSA!トラ!トライアンフ!

と皆が口をそろえて叫びだした理由が、ほんの少しだけわかった気がします。「一過性の流行」という見方もできるかと思いますが、このバイクに関しては、今後愛好家が残って文化になるだろうなぁとも感じています。そのくらいの強い魅力を感じました。

今後もいろんなバイクに乗せてもらう機会に恵まれたいな、そしてLTDも大切にしたいな、などなど。長い文章を書きながら色んな事を反芻した次第です。

 

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最後に、Iさん本当にありがとう!

また走りましょうね!

 

以上です。

 

 

2 件のコメント

  • トラの振動について、キャブの調整がキッチリ出ていると、振動の強さは少し弱く成る様に思います、この年代ですとキャブの精度が今一なので、左右の個体差も有るかも知れません、いずれにしても、低速から中速で山道・ワインディングを走ると最高ですね。
    トライアンフの専門店では、感で調整する方が多いですが ? です。

    • ⇒井上邦徳さま
      コメントありがとうございます。
      確かに燃調でも変わってくるかもしれないですね。

      そういえば以前何かの本で、
      「トラは出来の悪いところ、キャブや点火やクランクの精度、軸受などをリプレイスしていくと、どんどんポテンシャルを引き出せる。その代わりどんどん楽しく無くなる。
      手直しする前のほうが明らかに楽しい。不思議なもので、それがなぜだか分からない。だらトラは大嫌いだ」
      というトライアンフ専門店の話を読んだことがあります。

      不思議な魅力に溢れるバイクですね。

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